◎「せき柱及びその他体幹骨」の変形障害及び運動障害について
「せき柱」とは,いわゆる背骨のことで,32~34個の椎骨から形成されています,頭部と体幹とを支える骨格のことです。後遺障害の観点からは,「せき柱」のうち「頸椎」(頸部)と「胸腰椎」(胸腰部)とでは,主たる機能が異なっていることから(「頸椎」は主として頭部の支持機能を,「胸腰椎」は主として体幹の支持機能を担っているとされています。),それぞれの部位ごとに等級を認定することとされています。
「せき柱」の後遺障害
「せき柱」の後遺障害は,「変形障害」と「運動障害」であり,「変形」及び「運動」に対する制限の程度に応じて,等級が認定されることになります。
認定区分は,下記の認定基準のとおりです。
なお,「変形障害」について,せき柱の「後彎」の程度は,せき椎圧迫骨折等により,減少した前方椎体高と後方椎体高の高さを比較することにより判定されます。
また,せき柱の「側彎」の程度は,コブ法(=せき柱のカーブの頭側及び尾側において,それぞれ水平面から最も傾いているせき椎を求め,頭側で最も傾いているせき椎の椎体上縁の延長線と尾側で最も傾いているせき椎の椎体の下線の延長線が交わる角度(側彎度)を測定する方法)により判定されます。
変形障害
等級 |
労働能力喪失率 |
認定基準 |
後遺障害慰謝料 |
6級 |
67% |
5 せき柱(脊柱)に著しい変形を残すもの
X線写真,CT画像又はMRI画像(以下「画像資料」という。)により,脊椎圧迫骨折等を確認することができる場合であって,
- 2個以上の椎体の前方椎体高が著しく減少し,後彎が生じているもの,又は,
- 1個以上の椎体の前方椎体高が減少し,後彎が生ずるとともに,コブ法による側彎度が50度以上となっているもの
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1180万円 |
8級 |
45% |
(相当) せき柱(脊柱)に中程度の変形障害を残すもの
画像資料によりせきつい圧迫骨折等を確認することができる場合であって,
- 1個以上の椎体の前方椎体高が減少し,後彎が生じているもの,
- コブ法による側彎度が50度以上であるもの,又は,
- 環椎又は軸椎の変形・固定により,次のいずれかに該当するもの。
a)60度以上の回旋位となっているもの,
b)50度以上の屈曲位又は60度以上の伸展位となっているもの,
c)側屈位となっており,画像資料により,矯正位の頭蓋底部の両端を結んだ線と軸椎下面との平行線が交わる角度が30度以上の斜位となっていることが確認できるもの。
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830万円 |
11級 |
20% |
7 せき柱(脊柱)に変形を残すもの
- せき椎圧迫骨折等を残しており,そのことが画像資料により確認できるもの,
- せき椎固定術が行われたもの,
- 3個以上のせき椎について,椎弓切除等の椎弓形成術を受けたもの
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420万円 |
運動障害
等級 |
労働能力喪失率 |
認定基準 |
後遺障害慰謝料 |
6級 |
67% |
5 せき柱(脊柱)に著しい運動障害を残すもの
- 頸椎及び胸腰椎のそれぞれにせき椎圧迫骨折等が存しており,そのことが画像資料により確認できるもの,
- 頸椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術が行われたもの,又は,
- 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの。
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1180万円 |
8級 |
45% |
2 せき柱(脊柱)に運動障害を残すもの
- 次のいずれかにより,頸部又は胸腰部の可動域が参考可動域角度の2分の1以下に制限されたもの
a) 頸椎又は胸腰椎にせき椎圧迫骨折等を残しており,そのことが画像資料により確認できるもの,
b) 頸椎又は胸腰椎に脊椎固定術が行われたもの,
c) 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの,又は,
- 頭蓋・上位頸椎間に著しい以上可動域が生じたもの
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830万円 |
「その他の体幹骨」の後遺障害
「せき柱」以外の体幹骨,すなわち,「鎖骨,胸骨,肋骨,肩甲骨,骨盤骨」に「著しい変形を残すもの」は,後遺障害等級12級5号に該当します。
ここで,「著しい変形を残す」とは,裸体になったときに変形(欠損を含む)が明らかにわかる程度のものをいいます。
したがって,変形がX線写真等によって,はじめて発見し得る程度のものは,これに該当しません。
等級 |
認定基準 |
後遺障害慰謝料 |
12級 |
5 鎖骨,胸骨,ろく骨,肩甲骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの |
290万円 |