◎交通事故の過失割合(過失相殺)とは
交通事故に遭ったときには「過失割合」が非常に重要なファクターとなります。
大きな事故で多額の損害が発生していても、過失割合が高いと「過失相殺」によって、賠償金額が大きく減額されてしまうこともあるからです。
そもそも「過失割合」とはどのようなもので、どのようにして決定されているのでしょうか?
交通事故の過失割合や過失相殺について、山口の弁護士が解説いたします。
1.過失割合とは
1-1.過失割合について
過失割合とは、交通事故の損害発生に対する、加害者及び被害者のそれぞれの責任のことです。
交通事故が起こったとき、加害者に100%の責任があることは少ないです。多くのケースでは、軽微な前方不注視など、被害者側にも何らかの過失があるものです。
そこで、交通事故では、被害者と加害者それぞれの責任の割合を決定します。それが「過失割合」です。
1-2.過失相殺について
そして、被害者に過失割合があると、過失相殺が行われます。「過失相殺」とは、被害者の過失割合の分、請求できる賠償金の金額が減らされることです。
被害者に過失割合がある場合、被害者にも交通事故の結果発生について責任があります。
そうだとすると、被害者にも損害発生についての責任を負わせることが、公平です。このような考え方のことを「損害の公平な分担」と言います。
交通事故の損害賠償の場面では、被害者に過失割合があると、過失相殺により、相手に請求できる賠償金が減ります。
たとえば、本来3,000万円の損害が発生している事案であっても、被害者に2割の過失割合があると認定されたら、2割減の2,400万円しか請求できなくなってしまいます。
交通事故の被害者にとっては、自分の過失割合をなるべく小さくすることが重要となってきます。
2.適正な過失割合
2-1.基本の過失割合
交通事故の過失割合には、適正な基準があります。同じようなパターンの交通事故であれば、同じような過失割合にならないと不公平となるからです。
適正な過失割合の基準は、これまでの裁判例の蓄積や研究結果によって明らかにされた法的な基準です。交通事故の裁判をするときにも、こうした法的基準が使われます。
交通事故の過失割合認定基準では、事故のパターンを細かく分類して、被害者と加害者それぞれの基準となる過失割合が定められています。
たとえば、自動車と歩行者の事故、自動車と自転車の事故、四輪車と単車の事故などに分けて、それぞれにおいて、信号機のある交差点上の事故、右折の場合、左折の場合、信号機の色、信号機のない交差点上の事故など、非常に細かく分類されています。
そこで、起こった交通事故の種類を当てはめて調べると、妥当な過失割合を算定することができます。
2-2.過失割合の調べ方
過失割合の法的基準は「判例タイムズ」という法律雑誌にまとまっているので、一般的には判例タイムズの基準と言われていることもあります。
被害者の方が、ご自身で適正な過失割合を調べられたいときには、「別冊判例タイムズ38 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(判例タイムズ社)」という本を購入されると良いでしょう。
また、弁護士にご相談いただけましたら、適正な過失割合を調べてお知らせいたします。
2-3.修正要素について
ただ、過失割合には「修正要素」があります。修正要素とは、それぞれの交通事故の個別事情に応じて、基本の過失割合を修正すべき事情のことです。
たとえば、著しい前方不注視やスピード違反があったとき、飲酒運転していたケース、被害者が幼児や子ども、高齢者の場合、事故現場が住宅地、商業地であった場合、事故現場が夜間であった場合など、さまざまな要素により、基本の過失割合は変更されます。
3.現実の過失割合の決まり方
被害者が加害者の保険会社と示談交渉をするとき、必ずしも上記のような適正な過失割合が当てはめられるわけではないので、注意が必要です。
被害者は、適正な過失割合の基準についての知識がないことが多いので、保険会社は、基準より高めの過失割合を被害者側に割り当てることがあるためです。
その場合でも、被害者が気づかず示談してしまったら、その割合が有効なものとなってしまいます。
必要以上に大きな過失割合を当てはめられて、過失相殺によって大きく賠償金が減額されてしまっても、後から追加請求することはできません。
自分で示談交渉をしている場合、保険会社の主張する過失割合について、少しでも疑問や不満があるなら、妥協すべきではありません。
判例タイムズなどを使って適切な割合を調べるか、弁護士に適切な過失割合を確認することが必要です。
4.正しい過失割合を当てはめるために
現実的には、交通事故被害者の方が御自身で示談交渉をするとき、保険会社の言うままの過失割合で合意しているケースが多々見られます。
過失相殺は、もともとの損害賠償金額が大きければ大きいほど、影響が多大になります。
1億円の損害賠償金が発生している場合、過失割合が1割増えたら1,000万円賠償金が減額されるのです。
弁護士が示談交渉の代理を行うときには、当然、法的に正しい過失割合を適用します。
被害者の方が御自身で示談交渉していたときよりも過失割合が下がり、賠償金が増額されるケースも多いです。被害者に有利に修正すべき修正要素がある場合には、そういった事情も丁寧に拾い上げて、過失割合の減少を目指します。
交通事故に遭われて、保険会社の主張する過失割合が高すぎると感じている方、適切な過失割合がわからないという不安や不満がある方は、示談してしまう前に、お早めに山口の弁護士にご相談ください。