◎後遺障害(後遺症)とは
交通事故に遭って負傷すると、身体にさまざまな後遺症が残ってしまうことがあるものです。
その場合、後遺障害等級認定を受けることが非常に重要です。
認定を受けるか受けないかで、請求できる賠償金の種類や金額が大きく変わってくるためです。
後遺症と後遺障害認定の手続きについて、山口の弁護士が解説します。
1.後遺症と後遺障害
1-1.後遺症とは
交通事故の損害賠償を理解するためには「後遺症」と「後遺障害」について、知っておくことが大切です。
後遺症とは、交通事故を原因として身体や精神に残ってしまったさまざまな症状のことです。
たとえば、交通事故後に高次脳機能障害や遷延性意識障害(植物状態)になってしまうこともありますし、手足の関節が動かなくなったり目が見えにくくなってしまったりすることもあります。
1-2.後遺障害とは
このようなさまざまな後遺症の中でも、きちんと等級認定を受けた症状のことを「後遺障害」と言います。
単に後遺症が残っていても、後遺障害として認定されなければ、必要な賠償金を受けとることができません。
後遺障害は、「症状固定」した時点において、残っている症状に対して認定されます。症状固定とは、治療をしても、それ以上状態が改善しなくなった時点のことです。
そこで、交通事故で、きちんと後遺障害の認定を受けるためには、症状固定するまで通院を継続することが重要となってきます。
2.後遺障害の種類
交通事故の後遺障害には、非常にさまざまな種類があります。
代表的なものは、以下のとおりです。
- ○ 頭の後遺障害
頭部に衝撃を受けることにより、高次脳機能障害や遷延性意識障害などになるケースがあります。
- ○ 目の後遺障害
失明、視力低下、目の運動障害、まぶたの後遺障害などが発生します。
- ○ 耳の後遺障害
聴力障害、耳介の欠損傷害などがあります。
- ○ 神経障害
中枢神経や末梢神経が損傷を受けることにより、麻痺や痛み、しびれ、感覚異常などの各種の後遺障害が残ります。
- ○ 変形障害
骨などに変形や短縮が発生します。
- ○ 運動障害
関節などを動かせなくなったり動かしにくくなったりする後遺障害です。
- ○ 脊柱の後遺障害
背骨の変形などの後遺障害です。
- ○ 上肢・下肢の後遺障害
腕や脚の欠損や運動障害などです。
- ○ 手指・足指の後遺障害
手指や足指の欠損障害や運動障害などです。
- ○ 内臓機能の後遺障害
各種の内臓機能が失われたり低下したりする後遺障害です。
3.後遺障害の等級について
後遺障害にはさまざまなものがあり、ケースによって症状も程度も全く異なります。
そこで、後遺障害は、重症度に応じて1級~14級までの等級が定められています。
1級が最も重く、14級がもっとも軽いです。等級が上がるほど、支払われる賠償金の金額も高くなっていきます。
4.過失相殺をする
交通事故で後遺症が残ったとき、後遺障害認定を受けないと、後遺障害を前提とした損害賠償金の支払を受けることができないので、適切に後遺障害認定を受けることが重要です。
後遺障害の認定を行っているのは、自賠責(自賠責保険または自賠責共済)ですから、認定を受けるためには、自賠責に対して等級認定請求をしなければなりません。
このとき、事前認定と被害者請求という2種類の方法があります。
事前認定とは、加害者の任意保険会社が自賠責保険に対して後遺障害等級認定をする方法です。
必要な手続きはすべて任意保険会社が行うので、被害者にはほとんど手間がかかりません。
これに対し、被害者請求は、被害者自身が直接自賠責保険に対して後遺障害等級認定請求をする方法です。
どちらの方法であっても、請求があると、自賠責において後遺障害についての調査が行われて、後遺障害として認定すべきかどうか及び、認定する場合には等級が決定されます。
5.後遺障害認定を受ける場合と受けない場合の違い
後遺障害認定を受けると、認定された等級に応じて、以下の損害賠償が認められます。
5-1.後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、後遺障害が残ってしまったことに対する慰謝料です。
後遺障害の等級が上がるほど、金額が高くなります。
等級ごとの後遺障害慰謝料の金額は、以下の通りです。
1級 |
2800万円 |
2級 |
2370万円 |
3級 |
1990万円 |
4級 |
1670万円 |
5級 |
1400万円 |
6級 |
1180万円 |
7級 |
1000万円 |
8級 |
830万円 |
9級 |
690万円 |
10級 |
550万円 |
11級 |
420万円 |
12級 |
290万円 |
13級 |
180万円 |
14級 |
110万円 |
5-2.後遺障害逸失利益
後遺障害逸失利益とは、後遺障害が残ったことで、労働能力が低下したために得られなくなってしまった将来の収入のことです。
後遺障害が残ると、身体が不自由になるので、それまでのように効率的には働けなくなります。そこで、生涯年収が減ると考えられており、その減収分を、損害として相手に請求することができるのです。
後遺障害の等級によって労働能力喪失率が異なるので、等級が上がるほど、後遺障害逸失利益が高額になります。
また、事故前の年収が高いと、後遺障害逸失利益は上がります。
後遺障害逸失利益の金額は、ときには1億円を超えることもあり、交通事故の損害賠償金の中で主要な位置づけにあります。
こうしたものも、そもそも「後遺障害の等級認定」を受けなければまったく支払いを受けられないので、交通事故に遭ったとき、いかに後遺障害等級認定を受けることが重要か、わかります。
交通事故で辛い後遺症が残っても、被害者の方が御自身で対応されると、思うように後遺障害等級認定を受けられず、不満を感じる方が多くおられます。
これから後遺障害等級認定を受けようと考えておられるなら、一度、山口の弁護士までご相談下さい。