◎後遺障害診断書のポイントについて
交通事故で、適正な賠償金を受けとるためには後遺障害等級認定を受けることが重要です。
その際、認定機関である自賠責が非常に重視しているのが「後遺障害診断書」です。
適切に後遺障害認定を受けるためには慎重に「後遺障害診断書」を作成する必要があります。
以下では、後遺障害診断書の作成方法とポイントについて、山口の弁護士が解説します。
1.後遺障害診断書とは
後遺障害診断書とは、交通事故を原因として残ってしまった後遺障害について詳しく記載されている診断書のことです。
後遺障害認定を受けるためには、自賠責保険や自賠責共済に対し、後遺障害等級認定請求をする必要がありますが、そのとき、認定すべきかどうか、判断するための資料が必要です。
ここで非常に重要視されているのが、後遺障害診断書です。
後遺障害診断書は、交通事故後の患者の経過を見続けてきた医師が、専門家として客観的な視点から後遺障害について詳細に説明しているものだからです。
後遺障害診断書の記載内容により、後遺障害等級認定を受けられたり受けられなかったりするので、非常に影響力の強い資料と言えます。
2.後遺障害診断書の作成方法
後遺障害診断書を作成するためには、まずは「症状固定」するまで通院を継続しなければなりません。
症状固定とは、それ以上治療を続けても状態が改善しなくなった状態です。
後遺障害は、症状固定した時点で残っている症状について認められるので、後遺障害認定を受ける前提として、症状固定している必要があるのです。
症状固定したかどうかは担当医師が判断するので、医師が症状固定したと判断したら、後遺障害診断書の書式を医師に渡して診断書の作成を依頼しましょう。
後遺障害診断書の書式は、保険会社から取り寄せることもできますし、交通事故に力を入れている弁護士事務所でもストックしていることがあります。
書式を取り寄せたら、それを医師に渡すと、後遺障害診断書を作成してもらうことができます。
3.後遺障害診断書作成のポイント
後遺障害診断書を作成するときには、以下のような内容を記載します。同時に書き方のポイントも説明しますので、見ていきましょう。
被害者の情報
氏名や性別、住所、職業、生年月日などの個人情報です。
受傷日時
事故発生日です。
症状固定日
医師が判断する「症状固定した日にち」を記載します。
当院入院期間
後遺障害診断書を作成してもらう病院における入院期間を記載します。
当院通院期間
後遺障害診断書を作成してもらう病院における通院期間と実治療日数を記載します。
症状固定後の通院期間は含みません。
傷病名
症状固定時に残っている傷病名を記載します。
傷病名によっては後遺障害認定に影響を及ぼす可能性があるので、注意が必要な部分です。
既存障害
交通事故前から既往症がある場合に記載する項目です。
後遺障害と無関係な既往症がある場合には、無関係である旨はっきり書いてもらわないと、認定を受けにくくなってしまう可能性があるので、注意が必要です。
もしくは、無関係な既往症であれば記載しないのも1つの方法です。
自覚症状
症状固定時において、被害者自身が感じている症状です。
被害者の申告にもとづいて、医師が記載する項目です。自覚症状については、事故当初から一貫した主張を続けること、各種の検査結果と符合していることなどが必要となるので、医師に対する伝え方にも注意が必要です。
日頃感じている症状を、医師に対し、できる限り詳細に説明しましょう。
たとえば、頚部の痛みや右肩甲部の痛み、腰痛、右下肢のしびれ感などがあることを説明して、診断書に記載してもらいます。
各部位の後遺障害の内容
神経障害、胸腹部臓器、目、耳、脊柱、上肢・下肢、手指・足指など、各後遺障害の他覚的所見や検査結果を記載する部分です。
後遺障害診断書の中でも、もっとも重要視されるところです。
ポイントは「何故その症状が起こっているのか、症状の原因は何か」を説明できているかということです。
症状の説明をするためには、必要な検査を行って症状があることを証明することが必要です。
レントゲンやMRI撮影などの画像所見、MMTなどの徒手検査結果、可動域検査結果、病的反射測定などの結果を記載してもらいます。
基本的には医師が作成する部分なので、患者が口出しをすべきではないのですが、必要な検査が足りていない場合などには、追加で検査を受ける必要性について、患者側から打診することも必要なケースがあります。
障害内容の増悪・緩解の見通し
後遺障害として認められるためには、「今後、改善の見込みはない」、もしくは「改善可能性は低い」ということを書いてもらう必要があります。
「緩解・軽減の見通しあり」などの記載がなされると、後遺障害が否定されてしまうケースもあり、注意が必要です。
以上のように、後遺障害診断書作成の際にはいろいろなポイントがありますが、医師や病院によっては交通事故の知識が少なく、対応が不十分になるケースもあります。
また、患者のこれまでの通院方法が問題となり、後遺障害診断書を適切に作成しにくくなってしまうこともあります。
そのようなことを避けるためには、事故当初からの病院選びも大切ですし、後遺障害診断書作成を依頼する方法や、できあがった後遺障害診断書をチェックする視点も重要となってきます。
これから後遺障害診断書の作成を依頼しようと考えておられるならば、山口の弁護士がアドバイスいたしますので、お気軽にご相談ください。