◎腰椎捻挫について
交通事故に遭うと、「腰椎捻挫」とい傷病を負うケースがあります。
腰椎捻挫になった場合、後遺障害として認定を受ける際にいろいろな問題が発生することがあるため、当初から適切な対応をとっておきましょう。
交通事故の「腰椎捻挫」について、山口の弁護士が解説します。
1.腰椎捻挫とは
腰椎捻挫とは、人の腰の骨である「腰椎」に強い衝撃を受けて、ダメージを負ってしまう傷病です。
交通事故で、後ろからいきなり追突されたケースなどにおいて、腰椎が不自然な形にしなってしまう(S字型になる)ことにより、腰椎捻挫になることが多いです。
「腰椎捻挫」と言っても聞き慣れないかも知れませんが、「むちうち」なら大多数の方がご存知ではないでしょうか?
一般的に、むちうちは、首の骨である「頸椎」に損傷を受けた場合の「頸椎捻挫」のケースです。
頸椎捻挫も腰椎捻挫も同じ末梢神経の障害なので、症状や治療方法が似ていますし、交通事故損害賠償における取扱いもほとんど同じです。
一般的に、腰椎捻挫にかかるケースより頸椎捻挫(むちうち)にかかるケースの方が多いので、頸椎捻挫が有名になっているだけです。
そこで、腰椎捻挫のことが知りたい場合、むちうちについての知識がそのまま通用すると考えて良いでしょう。
2.腰椎捻挫の症状
腰椎捻挫の主な症状は、以下のようなものです。
- ○ 腰の痛み
- ○ 下肢(脚)や足(足指)の痛みやしびれ
- ○ 筋力低下
むちうちの場合、頸椎の損傷なので主に首や上肢(腕)、手や背中などに症状が出ますが、腰椎の場合には腰や下半身における症状が主となります。
3.腰椎捻挫の治療方法
腰椎捻挫になった場合には、整形外科において治療を受ける必要があります。
ただ、腰椎捻挫には外傷がないため、交通事故に遭ってもすぐには痛みやしびれなどの症状を自覚しないケースが見られます。
このような場合、病院に行かない方がいますが、2~3日後に症状を自覚してくることなどもあるので、事故に遭ったらすぐに(できればその日中に)整形外科を受診すべきです。
交通事故後、初診までに時間が経ちすぎると、後に後遺障害認定請求をするときに因果関係を否定される可能性もあるので、注意が必要です。
整形外科では、レントゲンやMRI、CTなどの画像撮影による検査を行い、症状を確かめます。
ただし、こうした画像検査では異常(他覚所見)が写らなくても、痛みやしびれなどの症状が継続するケースが多いです。
そういった場合、投薬や湿布、電気療法などにより、症状の緩和を目指していきます。強い痛みなどの急性の症状がある場合には、トリガー注射を行うケースもあります。
4.腰椎捻挫で認められる後遺障害の等級
腰椎捻挫になった場合、治療やリハビリを継続しても、痛みやしびれがとれずに後遺症となる場合があります。
この場合、「神経症状」として、後遺障害認定される可能性があります。
このとき認定される可能性がある等級は、一般的には、以下の2種類です。
- ○ 12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
- ○ 14級9号 局部に神経症状を残すもの
12級13号となるのは、MRIなどの画像撮影により、明確に症状を証明できる場合です。
そういった証明ができず、自覚症状しかない場合には、14級9号が認定される可能性があります。
5.腰椎捻挫で12級の認定を受ける方法
腰椎捻挫になったとき、骨には損傷を受けないことが多いので、レントゲンやCTによる撮影をしても、異常が見られることは少ないです。
これらの検査方法は、骨の異常を写すものだからです。
異常を発見できる可能性が高いのは、MRI撮影です。この検査では、骨ではなく軟部組織を写すことなどができます。
そこで、腰椎捻挫で12級の等級認定を受けるためには、主にMRI検査によって症状を証明する必要があります。
MRI検査機器にはさまざまな精度のものがあるので、なるべく高精度のものを使って検査を受けましょう。
6.腰椎捻挫で14級の認定を受ける方法
どんなに精度の高いMRI検査機器を使っても、目に見える損傷が見られないケースもあります。
その場合には、14級の等級認定を目指すべきですが、腰椎捻挫だからと言って、必ずしも14級の認定を受けられるわけではありません。
腰椎捻挫で後遺障害14級認定を受けるためには、自覚症状があることを合理的に推認できることが必要です。
具体的には、以下のようなことがポイントとなってきます。
交通事故後、すぐに整形外科を受診していること
交通事故後、すぐに整形外科を受診することが重要です。
整骨院にしか行っていない場合、後遺障害が認められない可能性があるので、注意が必要です。
整形外科に、一定以上の頻度で継続的に通院していること
整形外科に通院する場合、週に3~4回以上の頻度で、継続的に通院をすることが重要です。
通院期間が長くても、月に5日程度しか通院していないなどということであれば、症状が完治しているとみなされる可能性があります。
医師に訴えている自覚症状に一貫性があること
通院の際に医師に訴える症状の内容も重要です。
ときおり問題になるのは、行くたびに言うことが違ってしまう方です。
その場合、一貫性がないとして、後遺障害を否定されてしまう可能性が高まるので、注意が必要です。
神経学的検査により、異常が示されていること
MRIなどの画像検査では異常が写らなくても、腱反射テスト、可動域検査、知覚検査、筋萎縮検査、筋電図検査などにより、どこかに異常がないか、調べましょう。
なお、神経学的検査は、後遺障害12級を目指すケースでも重要です。
腰椎捻挫で後遺障害認定を受けるためには、専門的な知識と技量が必要です。山口で交通事故に遭われた方は、できるだけお早めに弁護士までご相談下さい。