◎交通事故で、傷が残ったケース(醜状障害)
交通事故で受傷すると、その後治療を受けても傷跡ややけどの跡などが残ってしまうことが多いものです。
その場合「醜状障害」として、交通事故の後遺障害認定を受けられる可能性があります。
交通事故の醜状障害がどのようなケースで認められるのか、山口の弁護士が解説いたします。
1.醜状障害とは
醜状障害とは、人の身体の露出面に残ってしまった瘢痕、線状痕や組織陥没などのことです。
瘢痕とはやけどの跡など、線状痕は傷を負ったことによる線上の傷跡、組織陥没は、欠損障害などで、身体にくぼみが残った状態です。
こうした傷跡が、身体の「露出面」に残ると、後遺障害として認定される可能性があります。
ただし、腹部や背中など、通常衣服に隠れている部分であっても、一定のケースでは後遺障害認定されます。
なお、交通事故による直接の受傷に限られず、手術によって残った傷跡も後遺障害の認定対象です。
たとえば、手術で顔に大きな線状痕が残った場合には、外貌醜状として後遺障害認定されます。
醜状障害には、大きく分けて外貌醜状と上肢・下肢の醜状痕の障害があります。
以下で、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
2.外貌醜状
外貌醜状とは、頭部や顔面、首などの目に見える場所に醜状痕が残ったケースです。
このような場所に醜状痕が残ると、人の視線も集まりやすく、被害者が受ける精神的苦痛や生活への影響もより大きくなるため、後遺障害の等級は高くなりやすいです。
外貌醜状で認定される可能性のある後遺障害等級は、以下の3つです。
2-1.7級12号 外貌に著しい醜状を残すもの
「外貌に著しい醜状を残すもの」とは、以下に該当するケースを言います。
- ○ 頭部に手のひら大(指の部分は含みません)以上の瘢痕が残ったケースや蓋骨に手のひら大以上の欠損が発生したケース
- ○ 顔面に鶏卵大以上の瘢痕が残った場合や10円硬貨大以上の組織陥没が残った場合
- ○ 頭部に手のひら大以上の瘢痕が残ったケース
2-2.9級16号 外貌に相当程度の醜状を残すもの
外貌に相当程度の醜状を残すものとは、顔面部に5センチメートル以上の長さの線状痕が残り、人目につく程度になっているケースです。
自賠責保険に後遺障害認定申請をすると、被害者との面接が行われて醜状の部位や程度を確認されます。
また、醜状痕が眉毛や髪によって隠れている場合には、醜状とは認められません。
2-3.12級14号 外貌に醜状を残すもの
外貌に醜状を残すものとは、以下のようなケースです。
- ○ 頭部に鶏卵大以上の瘢痕が残ったか、あるいは頭蓋骨に鶏卵大以上の欠損が残ったケース
- ○ 顔面部に10円硬貨大以上の瘢痕が残ったケースあるいは3センチメートル以上の長さの線状痕が残ったケース
- ○ 頸部に鶏卵大以上の瘢痕が残ったケース
外貌醜状について、過去には男性と女性の後遺障害認定基準が分けられていましたが、現在では上記の通り、統一されています。
2-4.外貌醜状と欠損障害の関係
交通事故後、顔面部に受傷して外貌醜状が残った場合、同時に鼻や耳、まぶたなどの「欠損障害」が発生するケースがあります。
たとえば、まぶたや耳殻、鼻の軟骨の一部や全部がなくなった場合です。
その場合、それ自体が欠損障害として認定されますが、同時に外貌醜状の後遺障害認定要件にも該当することが多いです。
このように、外貌醜状と欠損障害の両方に該当する場合には、より高い方の後遺障害が認定されます。併合認定は行われません。
3.上肢・下肢の醜状障害
醜状障害の2つ目として、上肢と下肢の醜状障害があります。
これは、腕や脚の露出面に醜状痕が残ってケースです。
上肢の場合には上腕(肩関節)から指先まで、下肢の場合には大腿(股関節)から足の甲までの部分に瘢痕や線状痕が残った場合に醜状障害が認定されます。
認定される可能性のある等級は、12級または14級です。
3-1.12級相当
上肢又は下肢に、手のひら大を相当程度超える大きさの瘢痕(3倍程度以上)が残ったケースでは、12級相当となります。
醜状痕がいくつかの部位に分かれている場合には、面積を合計して後遺障害の認定をします。
ただし、少なくとも1つ以上は手のひら大以上の瘢痕が残っている必要があります。
3-2.14級4号、5号
上肢の露出面に、手のひら大以上の醜状痕が残ったケースでは14級4号、下肢の露出面に手のひら大以上の醜状痕が残ったケースでは14級5号が認定されます。
4.露出しない部分の醜状障害
腹部や背中、臀部など、日常的に露出していない部分についても、後遺障害が認められる可能性があります。
全体面積の2分の1以上に瘢痕が残っていると12級相当、4分の1程度以上に瘢痕が残っていれば14級相当となります。
5.醜状障害と逸失利益
醜状障害となった場合、逸失利益が問題となることが多いです。
逸失利益は、労働能力が低下したことによって得られなくなってしまった将来の収入のことですが、「醜状障害が残っても、労働能力が低下しない」と言われてしまうのです。
しかし、外貌醜状が残ると、人に与える印象が変わるので、営業など、人と頻繁に会う仕事が難しくなることは十分考えられます。
モデルや有名人など、顔が商売道具となる仕事の方も、労働に支障が及ぶでしょう。
醜状障害のケースでも逸失利益が認められている事案はたくさんあるので、あきらめる必要はありません。
山口で交通事故に遭って醜状障害が残った場合や、これから後遺障害認定請求をする場合には、是非とも一度、弁護士までご相談下さい。